Posted on 2017.10.19 by MUSICA編集部

フレデリックのポテンシャルが全面開花した
会心の一作『TOGENKYO』完成!
4人での全曲解説インタヴューで徹底的に紐解く

自分の中に現実と幻想の合間で闘ってる部分はあるなと思ってて。
今の世の中には、現実も踏まえた上での夢とかロマンスが
足りない気がするんですけど、だからこそ僕らは
そこを音楽で伝えていきたいっていう想いがさらに強くなってる

『MUSICA 11月号 Vol.127』P.98より掲載

 

■これはフレデリック史上、過去最高に素晴らしい作品だと思います。このバンドの音楽的な個性と面白さが存分に発揮されましたね。

三原康司(B)「ありがとうございます! フレデリックがやりたかったこと、形にしたかったことを、この4人になって改めて考え直したんです。武ちゃんが入ったことで、自分達のルーツにある音楽のことだったり、俺がどういう詞やメッセージを書いて、それを健司がどう歌っていくかっていうことだったりに、より深く向き合えるようになって。で、向き合った時に、やっぱり俺らは音楽で伝えるってことをやりたいんやって思って」

三原健司(Vo&G)「今年の夏フェスでも、MCどうこうではなく、大切なのは音楽なんだっていうところにフォーカスすることを心がけてて。MCを褒めていただけることもあったんですけど、それよりも『めっちゃいい歌を歌ったね』とか、『音楽だけで楽しめるバンドやね』って言われるバンドでありたいなって素直に思うようになって」

■それは逆に言えば、たとえば去年の夏頃はMCでちゃんとメッセージを発さなければっていう意識があったと思うんだけど、今はもっとどっしり構えて、自分達の音楽を鳴らせばそれで伝わるんだっていう感覚に至れているということ?

健司「そうですね、そこに辿り着くことができたし、その自信がついたと思います。『自分が引っ張らないと!』っていう焦りの気持ちとかは今はもうなくて、ちゃんと自分の歌で、自分達の音楽で勝負できるところに突入できた実感はあります」

康司「そういう気持ちやったから、今回は作る上でもテーマ云々じゃなく、完全に音楽先行、曲先行でやってて。テーマを決めてその地図通りに作るんじゃなくて、素直に音楽と向き合って、素直に自分達の中から出てきたものを曲という形にするんだっていう姿勢でやっていて。その中で自然とこの『TOGENKYO』っていう作品ができ上がった感じがあるんですよね」

高橋武(Dr)「僕も今までの作品と比較しても素直だなと思いますね。あと、お互いによりいろんなものを吸収して作れた作品だなと思ってて。今回は特に、メンバー間で刺激とかアイディアを与え合えたと思うんですよ。たとえば康司くんのドラムに対する考えを僕がインプットして叩くみたいな。そうやってメンバー同士の価値観をより深く共有し合うことができたというか。かつ、誰かから出てきたアイディアに対してみんな前よりも柔軟だったなと思います。レコーディングの現場でアレンジが変わることも結構多かったし」

赤頭隆児(G)「多かったな(笑)」

高橋「それって、メンバーそれぞれの地の力がパワーアップしてる証拠でもあると思ってて」

康司「自分達が吸収してきた音楽を曲にどう合わせてどう出していくかみたいな部分は、凄くすんなりとやれた気がするな」

赤頭「いい曲にするためにっていうところと、それぞれ自分がやりたいことっていうのが、凄く自然にいいバランスでできた感じはありますね」

(中略)

■では1曲ずつ行きましょう!

 

01.TOGENKYO

■アップテンポなスピード感のある展開で、曲が進むにつれてどんどん感情が迸っていく印象があるエネルギッシュな曲です。これはどんな発想から出てきた曲なんですか?

康司「これは何も考えず自分がその時に思った感情や感覚をそのまま出して、ただただ素直に思ったままに作ろうっていうふうにして作った曲なんですよ。『フレデリズム』を出した後、メンバーと話してる中で、考えたりフィルターを通したりせず、自分の中からパッと出てくるものをそのまま形にしたほうが、より自分らしさもフレデリックらしさもある曲になるんじゃないかって思うことがあって。それで、その時に思った感情を口に出してみたら<桃源郷 待って 待ってほら>っていうあのフレーズが出てきて、その言葉のリズムから全体を作っていったんですけど」

赤頭「曲作りのタイミングじゃない、何かのレコーディングの合間に『できたから』って言われて聴いたんですよ。突然だったからビックリしたんですけど(笑)、でもその時からもう、康司くんらしい凄くいいメロディやなって思う曲で」

高橋「この曲を聴いた時に『これはきっと康司くんが何も考えずに、素直な感覚でやりたいように作った曲なんだ』ってわかったんですよ。いつも凄く考えて作ってくれるんですけど、でも考え過ぎるとそれが足枷になる場合もあるじゃないですか。だからそれが解けたらさらにいい曲ができるんじゃないかっていうのは前から思ってて。ただ、それって気持ち的にラクになってないとできない、追い込まれてたらできないと思うから、今回康司くんがこういう曲を書けたっていうこと自体が凄く嬉しかったんですよね」

健司「康司って基本的に、自分の想いを言葉で話すっていうよりは、全部曲の形にして持ってくることが多くて。そういう、康司のいろんな気持ちがそのまま表われてる曲ってフレデリックのデモ曲にはあるんですけど、これは特にそうでしたね。しかも、最初に“TOGENKYO”っていうタイトルを見た時は、新しいものができたっていう曲なのかなって思ったんですけど、実際に聴いてみたら、その新しい桃源郷を作るまでの過程を歌ってる曲やなという印象で。ということは、このデモをバンドで育てて完成させて、そこからさらにライヴをやっていく中で、新しい桃源郷を生み出せるんじゃないかっていう期待がめっちゃ出てきて」

■康司くんから出てきた桃源郷に行くんだという想いや願いを、バンドとしてちゃんと実現させようっていう気概が改めて強く生まれた、と。

健司「そうですね。バンドとしてそこに連れていってあげたいっていう気持ちもありました」

(続きは本誌をチェック!

text by有泉智子

『MUSICA11月号 Vol.127』