Posted on 2018.02.19 by MUSICA編集部

これまで以上に多彩な楽曲が無類のメロディと共に響き渡る
KEYTALKの『Rainbow』。4人への個別インタヴューで
解き明かす名盤の内実と、稀有なバンドが秘める真の可能性

より高みを目指す準備ができたぞっていう感じなんです。
『Rainbow』はこれで勝負だー!っていうぐらい強いアルバムなんですけど、
これで準備万端だー!っていうほうが気持ちとしては強いかもしれないです

『MUSICA 3月号 Vol.131』より引用

 

 

INTERVIEW #1 寺中友将

(前略)

■10曲目に“Rainbow road”という巨匠の曲があって、アルバムタイトルとこの曲って因果があるんですか。

「はい。『タイトルどうしよっか』ってみんなで話し合ってる時に、義勝が『Rainbow』でいいんじゃないか?っていう意見を出してくれて。義勝が“Rainbow road”っていう曲名から『このワードいい!』って思ってタイトルを出してくれたんです。それで、この曲の最後の<放物線>っていう歌詞に引っ張られて、義勝が作った1曲目の“ワルシャワの夜に”に<放物線>って歌詞が出てきたりとか。深い意味はなくとも『Rainbow』っていうタイトルがしっくりくるというのが決定的だったというか」

■今回の作品はKEYTALKのイメージをはみ出す、より挑戦をしている楽曲があると思うんです。“雨宿り”という渋谷系のような曲があったりとか、最後の2曲がバンド音楽としてではなくポップスとしてソロアーティストがやっているふうに聴いても過不足ない楽曲とアレンジになっていたりとか。全体的に今までを超越したKEYTALKの七色感や多彩感が込められてることが、この『Rainbow』っていうタイトルにも繋がっているんじゃないかと思うんですけど。

「嬉しいです。でも細かい話を義勝から聞いたわけではないんでわかんないんですけど、“雨宿り”も“FLOWER”も、新しいことをしようとしてやってるわけでは特になくて。今までもアルバムやシングルのタイミングで本当にいろんなネタは出してきたので、その中で今回出してみたいよねっていうモードになっただけだと思うから、特に新しい一面を見せようとかは考えてないんじゃないかな」

■基本的にそういうことは4人とも考えないバンドなんだね。それは考えないでここまで来れたからこそ――つまり、考えなくても上手くやってるしバンドも楽しいから、考えないほうがいいんじゃないか、みたいなこともあるんですか。

「ああ、それははっきりとあります。もちろんまったく考えてないわけではないんですけど、今どんどん勢いのある年下のバンドのライヴを観たり、先輩のズッシリしたライヴを観たり、その中で感じ取ったものが曲作りに割と強く反映されてるんじゃないかっていうふうには思うんです。ただそこで感じてるだけで本当に考えてはないというか、あんまり理屈っぽく細かく考え込まないほうがいいものができたり、楽しくできるって僕はずっと思ってるので」

(続きは本誌をチェック!)

text by鹿野 淳

『MUSICA3月号 Vol.131』

 

 

INTERVIEW#2 八木優樹

(前略)

■『Rainbow』というアルバムができました。どういうアルバムになったなって思っていますか。

「KEYTALKのアルバムの中でもかなりストレートでわかりやすいアルバムなのかなと思います。単純にグッドメロディで言葉がスッと入ってくるアルバムって、今まであんまりなかった気がしてて、そういう意味では歌を押し出してるアルバムなのかなと思いますし、それは他のバンドにはない僕らの強みですよね。僕はメロディのよさに関しては周りのバンドより抜けてると思っているんです。で、それを押し出せたアルバムなのかなと思います」

■その自分達のバンドの強みを確信したのは、いつぐらいの時期なんですか。

「割と最初から思ってたんですけど、特に義勝が作曲をし出した頃からですかね。僕は歌メロが美しいバンドが好きなんですけど、彼がそういう楽曲を凄い持ってきてくれるようになって。それで義勝がどんどん周りの3人に影響を与えていくようになって、J-POP的良メロをひねくれたバンドサウンドに乗せる、みたいな時期に突入してったと思います」

■八木くんもそれで火がついて曲を作りたいなって思ったの?

「いや、僕が作りたいと思うに至ったプロセスはそういう前向きなものではなくて(苦笑)。僕だけが作ってないという事実に関してメンバーに申し訳ない気持ちがあったし、曲を書けないこと、書いてないことがコンプレックスになってたので……。だからそんなにポジティヴな動機ではなかったですね」

■八木くんがそこで踏み出したのは何故だったんですか。

「常々自分も曲を作りたいとは思っていたし、僕のそういう気持ちを許容してくれるメンバーだったのが大きかったと思います。だから僕が曲を書けたのは、メンバーに助けてもらったからって感じですね。最初は他のバンドだったら作って持っていっても『これ、よくないわ』って言われて却下されるレベルだったと思うんですけど、ウチのメンバーは『お前が作ってきたんなら入れるわ』って感じで入れてくれたから。そっから僕の自信と世界が広がっていった感じがします」

(続きは本誌をチェック!)

text by鹿野 淳

『MUSICA3月号 Vol.131』

 

 

INTE RVIEW#3 小野武正

 

(前略)

■ひとつお訊きしたいんですが、今って追い風を感じてるんですか?

「いやぁ、全然追い風ではないんじゃないかな。……KEYTALKは結構難しい時期だと思います。過渡期というか、今後たとえば20年、30年ってKEYTALKの歴史が続いていって振り返った時、この2017年~2019年辺りは鬼門だったねって言うような、そういう時期の真っ只中にいるって自分では感じますね」

■それは外的要因ではどういうところから感じるの?

「元を辿ると、KEYATLKっていうバンドを知ってもらいたいっていうところでがむしゃらに前へ進んでた時期がずっとあって。で、そこからある程度知名度も出てきて、『KEYTALKってこういうバンドだよね』っていうような、あんまり聴いてもらってない人にも先入観を持たれるぐらいになってきたりして。そうしたら新しいお客さんに向けて突き進むこととプラス、今までついてきてくれたお客さんや、ちょっと名前を知ってるある意味偏見を持ってるお客さんだったり、昔は好きだったけどもう好きじゃないっていう方達にも聴いてもらわなきゃいけないわけで。そうやって背負うものが大きくなるっていうか、相手にするものが大きくなるから鬼門なわけで。昔はただ前にひとつ進んでいけばよかったのがそうじゃなくなって……今はその真っ只中なのかなって思います」

■内的要因でそういう過渡期的な意識はあるの?

「それはないかもしれないです。外的にそういうのがバーッと来てるからこそ、今は内的にはむしろより固まって結束が高まってるって感じはしますね」

(続きは本誌をチェック!)

text by鹿野 淳

『MUSICA3月号 Vol.131』

 

 

INTERVIEW#4 首藤義勝

(前略)

■今回は内面的でナーヴァスなもの、一番最後の曲では義勝くんの中にある「愛」というものに対するひとつの考え方が露わになってますよね。それは今のご自分の、あるいは今のKEYTALKの何を表してると思いますか。

「個人的には歌が必ずしもナーヴァスである必要はないと思うんですけど、もっと新しいタイプの歌詞を書いてみたいと思って臨んでいたので、自然とその結果出てきたテーマ達なんです。曲によってシチュエーションは違うんですけど、割と前半には暗い曲が集まったなって。でもダウナーな雰囲気を押し出したいわけではなくて、逆境のエネルギーみたいなものをサウンドの力強さと融合させたかったっていうことなんですけど」

■面白いですね。敢えて訊くんですが、楽しいKEYTALKから脱却したいみたいな気持ちはあったんですか。

「現状に満足したくないなってことはずっと前から思い続けていて。楽しさを排除する必要もなかったんですけど、よりいいものを!って突き詰めた結果、今までみたいなあからさまなパーティチューンは入ってこなかったなって思ってます。無心で振り返らずに、いいものをいいものを……って自然と曲を集めていった結果なので、楽しいところから脱却しようとかは考えてなかったです」

■1曲目にダークに高揚する“ワルシャワの夜に”を持ってきたところに『PARADISE』との如実な違いを感じて。バンドとして影の部分も表現できるんだぜっていう挑戦をはっきり出していったのかなと思ったんです。

「自然な流れでそうなっていったんじゃないかなって思います。たとえば“ワルシャワの夜に”みたいに、ソリッドなサウンドでロックなカッコよさを追求して、自分の琴線に触れるようなメロディを書いて乗っけた結果、自然とこういう歌詞がハマるんじゃないかって思ってシリアスになっていったというか」

(続きは本誌をチェック!)

text by鹿野 淳

『MUSICA3月号 Vol.131』