Posted on 2018.02.22 by MUSICA編集部

Mrs. GREEN APPLE流ゴスペルソング
“Love me, Love you”。万華鏡の如く鮮やかな変幻と拡張を
繰り返しながら「音楽」をモノにしていく、
その歓喜とカウンター精神を大森元貴、語る

ずっと自分らが引け目を感じてきた音楽的な強さ、
音楽的な深みっていうところに目を背けず、そこをちゃんとクリアしたかった。
この数ヵ月間はミセスとして次に行くためにいろんなことを考えてましたね

『MUSICA 3月号 Vol.131』より引用

 

■2018年一発目のシングルです。

「はい。……なんかインタヴューするの、すっごく久々な気がする」

■私も凄く久々な気がしてるんだけど、でも去年の8月にリリースした『WanteD! WanteD!』以来だから、言っても半年ぶりくらいなんだよね。だからこの久々感は、このシングルを聴けば明らかな通り、その間にバンドのモードが変わったことが関係してるんじゃないかと思うんですが。

「なるほど、そうかも。“WanteD! WanteD!”と年末に配信限定で出した“WHOO WHOO WHOO”っていう曲でEDMからの流れみたいなものを強く意識して作ってたところからは、モードは確かに変わってて」

■そうなんですよね。“WHOO WHOO WHOO”は昨年の春のツアーに向けてできた曲だったわけだけど、『Mrs. GREEN APPLE』というアルバムに向けたタームから、EDM以降の海外のポップソングから影響を受けての流れがあったんだけど――もちろんその間には“どこかで日は昇る”のような曲もあったとはいえ――今回の表題曲である“Love me, Love you”は生音にこだわったビッグバンド的な編成の、ゴスペル仕様のポップアンセムで。このモードチェンジが起こったのはどうしてだったんですか。

「そもそも、なんで僕らがいろんな音楽の形を吸収しようとしてたかっていうと、音楽的なコンプレックスがあったからでもあるんですよ。僕達って元々ミュージシャンの集いとして集まったメンバーじゃないから。ある意味それが強みでもあるんだけど、でもバンド組んで何回目かのライヴで大人の方々が見つけてくれて、その勢いに自分らが乗っかっていった部分もあったし。もちろんその中でもちゃんとここまで来れたっていうのは自負してるんだけど、どうしてもちょっとコンプレックスだったりするわけですよ。僕らは本当に音楽的に強いバンドなのかどうかっていう、そこがモヤモヤしたりもどかしい感じがある中でずっと音楽をやってて」

■それは演奏スキルだったり音楽のバックグラウンドだったりってこと?

「そう。ライヴに関してもそうだし。若くて勢いがあって、割と華やかで元気なMrs. GREEN APPLEっていうパブリックイメージがあって。そのイメージは僕らも最初に作り上げようとしてたし、なんだかんだそれが僕らの本質だとも思うんだけど、でも、その楽しさってもので補ってた部分もあるような気がしてて……。そういうコンプレックスみたいなものをクリアしたいなと思ったんですよね。だから今回の“Love me, Love you”はビッグバンド編成で、7thと9thのコードしか出てこないようなジャズテイストの雰囲気で、ちゃんと音楽の知識とスキルがないと挑戦できない、それがないまま挑戦したら滑っちゃうようなことを、敢えてやりたいんですって、そういう話をまず制作前にメンバーにしたんですよね。ずっと自分らが引け目を感じてきた音楽的な強さ、音楽的な深みっていうところに目を背けず、そこをちゃんとクリアしたいんだって。そういうふうに、この数ヵ月間はミセスとして次に行くためにいろんなことを考えてたんですよね」

■デビュー当時20代のメンバーもいたけど、でも10代バンドとしてデビューをして。ティーンエイジャーのバンドって、若さ故の衝動と無鉄砲な強さみたいなものがバンドの煌めきになってることも多いし、そうなるとファースト、セカンドはよくても、メンバーが大人になるに従って案外普通のバンドになってしまうっていう例は日本に限らず海外でもたくさんあって。そういう危機感みたいなものもあったんですか?

「僕ひとりのことで考えたら、ぶっちゃけそういう危機感はないんだけど、バンドの中の大森元貴として考えた時には多少危機感があったんだと思う。僕自身は、高校生バンドや10代バンドじゃなくなった時に凄い自由になったなっていう実感があったけど」

(続きは本誌をチェック!)

text by有泉智子

『MUSICA3月号 Vol.131』