Posted on 2018.02.22 by MUSICA編集部

くるり、新たなる名曲“その線は水平線”リリース。
さらなる未知の景色へと歩を進めゆくバンドの今と
とあるモード変化を遂げた岸田繁の今を、雪の夜に語り合う

我々芸術家はただ傍観するだけやなく、
「いいもん見ようぜ」っていう気持ちだけは
意図して持ち続けないとあかん。
長いものに巻かれることには僕は興味はない

『MUSICA 3月号 Vol.131』より引用

 

(前半略)

■今回の “その線は水平線”は、2009〜2010年頃、“奇跡”とかを作っている辺りの時期にできた曲で。

「そうですね。これはほんまなんも考えず、くるり組んだ時からぐらいの自分の作り方で、ただ作った曲で。なんのプレッシャーもなく、BOBOや山内(総一郎/フジファブリック)と一緒にツアー回ってる時に四国かどっかの楽屋で適当に作って。その後も何回かやってたんですけど、今まで形にならずにずっとあった曲なんですよね」

■実際、私も何年か前にペンタトニック(くるりのプライベートスタジオ)でこの曲のプリプロやってるところを見せてもらってるんですが、その時とは聴き心地が全然違う音像になっていて。これは、ご自分がやりたいことを見つけていった中のひとつっていう感じがあるんですか?

「いや、これはそういうわけではないんですけど(笑)。実は、今すでにアルバムに向けて結構な曲数レコーディングしてるんですよ」

■おお、そうなんですね!

「で、そのレコーディングしてる曲達にはふたつの方向性があって。ざっくり言うと、実験的なヤツと歌モノ。そういうのって作っていくと混じってくるのかなと思ってたんですけど、今回はそれが凄く乖離してたんですよね。両方とも僕は好きなんですけど。……くるりって、一時期までは流行りのものの表層を削って粉チーズみたいに自分達の音楽にふりかけるみたいな(笑)、割とそういうやり方をしてきたし、一時期からは自分らの中での流行りを追い求めるみたいになってきたんですけど、もうそういうのもやめて、その曲を、その時に、どう録りましょうかみたいな具合でアルバムを作ってて。このシングルの曲も、僕が行ってる京都精華大学で録ったし、表題曲のほうはその大学で出会った谷川充博さんにエンジニアをやってもらってて。これまでくるりは外国へ行ったりとか、毎回違うやり方で録音してきましたけど、でも録り方自体は至って普通というか、割と他のアーティストもよくやってるやり方でやってたんですけど、この曲は録り方からしてちょっと独特なサウンドに仕上がるチームでやってるというか。で、そういうのもそれが目的だったんやなく、たまたまそうなっただけで。だから、今の僕らはユルユルですよ。僕らユルさって否定してたんですけど、今は凄くユルくやってて。なんか、ユルいのがいいなと思って」

■でも、でき上がったプロダクションにはユルさはないですよね。

「そりゃもう、そこは佐藤(征史/B)さんがやり出したら相当やるんで」

■はははははははは。

「だから僕がユルい分、佐藤さんと、あとディレクションやってる幹宗(山本幹宗)が締めてますね。それでも相当ユルくやってる」

■今回の“その線は水平線”は、表題曲の他に“その線は水平線 Ver.2”という別ヴァージョンも収録されていて。どちらも90年代のオルタナティヴ・ロックのリヴァイヴァル的な印象もある音像なんですが、でも、特に表題曲のほうは実はそれとは全然違っていて。

「そこはもちろんキーワードにはなりました。で、割と表層の部分でそれを追い求めたんがVer.2のほうで、なんかよくわからんものになあったのが表題曲のほうやと思います(中略)今っていろんなデジタル機器の進歩がありますから、なんとかふうの音は割と簡単に作れる時代ですけど、でもほんまにその音を出そうとしたらやっぱりどの機材をどう使うかって話になる。そういう、『あ、この音ってこれで出すからこうなんねんな』ってことを目の当たりにして。で、そういうのって、特にこういうポップスとかロックの制作の現場では楽曲の大きな取っ掛かりになることもあるんやなと改めて思いましたね」

(続きは本誌をチェック!)

text by有泉智子

『MUSICA3月号 Vol.131』