Posted on 2018.04.21 by MUSICA編集部

精神に巣くったゲットーの棘を鋭く光らせた
Creepy Nuts、初のフルアルバム『クリープ・ショー』
あらゆるリア充、パリピを蹴散らす渾身の新作を
R-指定とDJ松永のふたりが語り尽くす!

卑下してきたものも取っ払って、胸を張っていいんじゃないかって。
引きずってきた自分の過去に対して、もう俺らはそうじゃないって書けたのが、
最大の成長ポイントなのかなって思ってます

『MUSICA5月号 Vol.133』より引用

 

(中略)

■今回の作品、まさにこれまでのCreepy Nutsのベスト盤と言っていい作品ですよね。今までの3枚の作品から1曲ずつ入ってるし、“トレンチコートマフィア”も元々は松永くんの作品に入っていた曲で。

松永「はい。でも最初は、全部新曲でいこうと思ってたんですけどね」

R-指定「そうそう。“スポットライト”っていう曲を軸に、そこから始まって新しい自分達を見せていくようなアルバムにしようって言ってたんです。でも、やっぱりファーストフルですし、一旦今までの自分達を全部詰め込んだ上で、最後に“スポットライト”で次に向かう流れにしたほうがええなっていう話になったんですよ。どちらにせよ、“スポットライト”の最後のヴァースが起点になったアルバムやと思いますね」

■<使えない奴らトレンチコートマフィア/たりないふたりか?所詮脇役か?>という今までのキーワードを束ねて、<もうやめようや、もう胸張ろうや/他の誰でもねぇ俺に言ってんだ。>、<I’m a No,1 player 元ベンチウォーマー>という言葉が綴られているところですよね。

R-指定「これまで自分達を卑下してきたのも取っ払って、もう胸を張っていいんじゃないかって。自分を卑下してきたことだったり、引きずってきた自分の過去だったりに対して、もう俺らはそうじゃないっていうことを書けたのが最大の成長ポイントなのかなって思っていて」

■そんなアルバムの音楽的な面からまず言わせていただくと、相当ブレてないアルバムだと思いました。具体的に言うと、非常に暗いです。

松永「はははははははは! まあ、本当そうですよね(笑)」

■圧倒的にキャッチーなのは“ぬえの鳴く夜は”と“スポットライト”なんですね。でも、この2曲のイントロのギターの暗さと、歪み感と、場末感と。これだけキャッチーな曲なのに、このイントロで入るのか!っていうのが、ある意味このふたりの性格を明確に表してると思ったんです。

R-指定「でも、ほんまにそうで。俺なりに感じるこのアルバムの音って――たとえばこのジャケット写真が上がった時にふたりでアガったんですけど、これがそのまま俺らの音やなっていう感覚があったんですよ。雑多でドンヨリした感じも、一方では明るい部分もある。ある種の見世物小屋感みたいなのは、自分達のイメージしている部分ではありましたね」

■誤解を恐れず言うと、昨今のどんなロックバンドよりもロック然とした歪んでダークな音になっていると思うんです。以前のインタヴューで松永くんは「俺にDJで好きな音楽をかけさせたら、竹原ピストルしか流さない」と話されてましたが、ある意味それがそのまま――。

松永「あー、確かにそうかもしれない(笑)。言われてみれば、“スポットライト”なんかは特にドラマチックにしたかったんですよ。HIP HOPを聴いて熱くなる衝動を聴き手の中で駆り立てさせたいっていう気持ちがあったので。別に感動的なことを言ってなくても、いいことを言ってなくても、カッコよくて泣きそうになる曲がHIP HOPの中にいくつかあって。たとえばライムス(RHYMESTER)で言ったら“The Choice Is Yours”とか、あとはDEV LARGEの曲とか――トーンとかの熱さで泣きそうになるような曲にした上で、今までの曲とは似せず新鮮さを出したくて」

(続きは本誌をチェック!)

text by 鹿野 淳

『MUSICA5月号 Vol.133』