Posted on 2018.05.24 by MUSICA編集部

あらゆる多様性を認めて肯定する歓喜の歌、
遂にロックのど真ん中で鳴り響く!
人と人が交わる瞬間にロマンを見続け変えてきた世界。
感謝と愛と次なる夢を示した爆風のような一夜、独占密着!

遂に辿り着いた武道館公演に完全密着!
会場入りから打ち上げまでを共にし、終演の2日後には
全員インタビューを決行。大舞台でも変わらぬ4人の姿から、
SUPER BEAVERというバンドの根幹を解く

『MUSICA6月号 Vol.134』より引用

 

(前略)

 12時10分。上杉がステージに向かう。足元のエフェクター周りを確認したり、ステージ後方に配されたLED画面をじっと見上げたりと、入りから最も言葉数少なく過ごしている男は淡々と集中力を高め続けている。要するに、気合いが入っているのだ。さらに続いて柳沢と藤原も早速ステージへ。藤原はドラムセットに座り、早くも軽く叩き出す。ライヴでは顔を真っ赤にしてエモーションを飛び散らせる男だが、実は4人の中で最も「自分のルーティン」がかっちりしているのがこの藤原で、同時にマイペースなメンバー達のこともよく見ている。

藤原「今日も、本当は会場入りしたらすぐにヘアメイクのはずだったんだけど、4人とも早速バラバラに動き始めたでしょ(笑)」

■そうだね(笑)。渋谷くんと柳沢くんはずっと冗談飛ばし合ってるし、リラックスできてるね。

藤原「いや、それは緊張してるんだな(笑)。で、リーダー(上杉)は緊張すると歌を歌い始めるパターンが多いの。結構わかりやすいからね」

 そう言ってビーバー各々の「緊張の計り方」を教えてくれた藤原。しかし入りからずっと、楽屋からは緊張を一切感じさせない笑い声が聞こえてくる。

仲がいいだけでバンドが続くなんて綺麗ごとを書くつもりは一切ないが、彼らの間と言葉のリズムと和やかさは、本当に放課後の教室みたいだ。メジャー時代にバンドが自分達の思うように動かせずお互いのせいにし合った時期があった、と語ってくれたこともあったが、ある意味、そこで失われた青春をひとつずつ取り戻していった過程がこの放課後感には表れているのだと思う。たとえば柳沢が重度の病気で生死を彷徨ったことを乗り越え、改めて「独り」と「ひとり」はまったく違うものなのだという実感を4声のシンガロングで表した“証明”、バンド10周年に照れもせず青春という原点を合唱した“青い春”、小学校の教科書にも載っていそうなメロディで目の前の人とすべての感情を共有したいと歌い切った“全部”……青臭くなっていくばかりの音楽達は、人と出会うほどに誠実さを自分自身に求め、取り繕う自分を脱ぎ捨てて無垢になっていった歴史そのものなのだ。

13時。全員でステージに向かい、サウンドチェック開始。ちなみに、武道館との初接触の練習をあれだけしていた渋谷の武道館ステージ初対面は――「おおー、いいねえ!」でした。

 13時27分、セットリスト2曲目の“証明”からリハーサルがスタートした。もちろん音の質感やモニターの調子を確認しながら曲が進んでいくのだが、確認にしてはとにかく歌が初っ端からフルスロットルだ。そして彼らならではだと思うのは、つんのめるような8ビートが主軸であっても、その疾走感よりも前に一音一音の歌心がズシリと耳に入ってくる。歌そのもののメロディアスさ以上に、4音それぞれが「歌っている」のである。この異様なくらいのサウンドの主張の強さは、言うまでもなく人とともに歌うことへの意識が各々に強まってきたことの表れだろう。演奏を聴いても、リハとは思えないほどに歌い上げている渋谷の様子を見ても、間違いなく今日は絶好調だ。

(続きは本誌をチェック!)

text by矢島大地

『MUSICA6月号 Vol.134』