Posted on 2018.06.24 by MUSICA編集部

節目の5枚目、お茶の間ブレイク後の1枚目、
つまりはかつてない勝負のアルバム『SHISHAMO 5』。
SHISHAMOの変化、そして宮崎朝子の揺るぎない確信を、
入り組んだ糸を解くように丁寧に紐解く!

 

本当に傷ついてる人のための歌を作ろうと思ったら、
フィクションじゃない、自分の中にあるものを出していかないダメだなって。
それは自分でもちょっとびっくりというか。こうなると思ってなかった

『MUSICA7月号 Vol.135』より引用

 

■『SHISHAMO 5』は節目の5枚目らしい一大変化作だと思っているんですけど、ご本人的にはどう思われているんですか?

「変化……とまでは行かないかもって気持ちです。SHISHAMOをやってる限りはSHISHAMOの音楽というのがあって、核となる部分は変わらないので。だから変化的なものはそんな意識していないのかなって……なんか、今は無事いいアルバムができてよかったなって思っていて。というのも、作ってる最中はわからなかったんです。自分の中でいいものになるかどうか、ちょっとわかんない感じで作ってて。完成してやっと、『あ、大丈夫だ、いいもの作ったな』って思ったんですよね。だからひと安心というか」

■それは今までと違う感覚だったの?

「『SHISHAMO 4』が凄くいいアルバムになったな、と感じていたので。でも次の作品は出さなきゃいけないし、だったら『SHISHAMO 4』よりもいいものを出そうっていうことだけは自分の中で決まっていて。そこに向けてたんで、今までとは違うやり方でアルバムを作ったのは間違いないんですよね。曲の作り方自体は変わってないんですけど、アルバムの作り方として『とにかく作ろう!』って感じで曲を作って……」

■ん? 作り方自体は変わらないけど「とにかく作ろう!」っていうのが違うって、よくわからないんだけど。それは具体的に違うの?

「結構違うんですよ、これは(笑)。今まではアルバムを作る時って、アルバムの完成形をなんとなく見越しながら曲を作ってたんですけど、今回はそうじゃなくて。『SHISHAMO 4』を出してからの1年はとにかく曲を作って、いい曲ができたら、その曲がアルバムに入るかどうかは考えずに、それをレコーディングしていくっていう形でやってきて。その中から一番いいものを選んでアルバムに入れるっていう作り方にしたんです」

■ストーリーやコンセプトイメージよりもベストソング集を作っていたということだと思うんだけど。前作が最高だったとご自分で純粋に思えたのもいいことだったし、同時に結果的にその作品に今までの中で一番お茶の間まで広がった曲(“明日も”)が収録されているという意味で、世の中に対しても結果を残したアルバムになったわけじゃない? そういうことは宮崎の中でどういうふうに整理をした上で今回のアルバムに臨んだの?

「……それは感じていたからこそ、いつもと違う作り方をしたんだと思います。今までだったら、『いい曲できた、じゃあこれアルバム入れよう』ってなってたのが、『いい曲できた、でももっといい曲できるかもしんない』っていうふうな考え方になったし。そういう意味では少し慎重になったのかもしれないですけど。……『SHISHAMO 4』は、SHISHAMOっていうものが一番わかりやすく、SHISHAMOの音楽っていうものが端から端まで示せた――SHISHAMOはいろんな音楽をやると思ってるんですけど、それをちゃんと全部わかりやすく『SHISHAMOです!』って自己紹介ができるアルバムになっていたと思うんです。それをあのタイミングで作れてよかったなって、当時は思ってたんですけど」

■逆に言うと、その後に作るアルバムだというプレッシャーはあったんだ。そのプレッシャーとはどうつき合って、これを作っていったんですか?

「でも、できない時はできないしなぁと思って」

■あはははは。

「(笑)。曲を作れない時は作れない、いい曲ができない時はできないと思うんですよ。だから、もうとにかくやるだけなんです」

(続きは本誌をチェック!)

text by鹿野 淳

『MUSICA7月号 Vol.135』