“シリウス”“Spica”“望遠のマーチ”といった
新曲を続々と完成させたBUMP OF CHICKEN。
「今まで」から「これから」へ完全シフトした
BUMPのすべてを藤原基央が語り尽くす表紙巻頭大特集!
要は普遍的なものを作りたいなっていうことだと思うんです。
僕は16歳か17歳の時に“ガラスのブルース”って曲を作りましたけど、
それって20年以上前なんですよ。あの曲には20年以上前があるわけで、
そう考えると20年以上先もあるわけですね。
僕が明日死んだとしてもあるわけです
(前略)
■(“シリウス”について)これは転調してサビが来るという非常にテクニカルな、でも自然とスッと入ってくるメロディなんですけど、そこの部分で歌われてる言葉には非常に根源感がありますけど、そういうところに至ったのはどうしてなの?
「これも日頃思ってるんだよね。最近特に思うことってわけではなくて、きっと大昔の曲を引き合いに出したとしても同じことが言えるし」
■簡単に解決できることを思ってるわけじゃないから永遠に追求していくことになる、と。
「うん、だと思います。僕は『今、僕はこれを歌うべきだ』みたいな使命感とかテーマみたいなものを持って制作活動をしてるわけではなくて。これは昔から言ってることだけど、童謡が作りたいなというか。童謡っていっても<さいた さいた チューリップのはなが>みたいな曲を作りたいってことではなくて……だから童謡だとちょっと言葉は違うと思うんですけど。要は普遍的なものを作りたいなっていうことだと思うんです。1年後だって20年後だって人間は持ってるわけじゃないですか。それと同じように10年前だって20年前だってほとんどの人があるわけじゃないですか。曲にもそれがあるなと思っていて。たとえば僕は16歳か17歳の時に“ガラスのブルース”って曲を作りましたけど、それって20年以上前なんですよ。あの曲には20年以上前があるわけで、そう考えると20年以上先もあるわけですね。たとえ僕が明日死んだとしてもあるわけですよ。だから『今、俺はこれを歌うべきだ』とか、そういうのは自分にとってはどうでもよくて。でも今この気持ちを曲にして残しておきたいっていう時はあるんです……たとえばツアー中に曲を作りたくなるのもそうで。それってたぶん誕生日に写真を撮る、みたいなことだと思うんです。誰かが誕生日ケーキの前でフーッてやってる瞬間を理由もなく写真撮るじゃん。あるいは富士山の山頂まで登って……僕は10年前くらいに升くんと登りましたけど(笑)、その山頂で写真を撮るみたいな、そういうことに近いと思います」
■なるほど。
「人は理屈じゃなく写真を撮るけど、でも、なんとなく撮っておいたその写真が未来にいろんな情報をくれたりするじゃないですか。その写真が恥ずかしいっていう場合もあるかもしれないし、その写真が凄くその時の自分を奮い立たせる何かになる可能性もあるし、その時の自分を癒やす何かになる可能性もあるし、いろいろあると思うんですけど、僕が曲を作るのもそれに近いかもしれないです。そういうスタンスで曲を作ってるというか。で、そういうスタンスで曲を作ってるから、バンド活動23年目ですけど、20年前に書いた曲と同じような感覚がいまだに出てくるし。だから時代性とか今に対してどうとか全然説明できないんだけど」
■時代性とか今ってものは生きてる以上は入り込んでくるんだけど、モチーフにしてないってことね。
「そうだと思う。ただ、生きてる以上は入り込んでるかどうかっていうのも、ちょっと怪しいかもしれない。時代性をそのひと言で表しちゃうようなものって意識的に避けちゃうんですね。たとえば“記念撮影”という曲を書きましたが、あの時は画像でもなく写真でもなく、『撮影した』という証拠を言葉で表現しなくてはいけないなと思ったんだよね」
■スマホ感を0にするってこと?
「いや、むしろ逆で。スマホの人でも、あるいは自分の親世代とかも……あ、でもウチの母ちゃんは全然スマホで写真見てるか(笑)。要するに、写ルンですを現像して持ってる写真が思い出の写真になってる人もたくさんいるじゃないですか。俺の世代のヤツらが高校生だった時の思い出は全部、フィルムで撮った紙の写真で残ってるだろうしね。だから、スマホでも写ルンですでもなく、ただ『撮影した』っていう行為を言葉にしないとダメだと思ったんだよね。時代性を限定しちゃうような作りにはなるべくしたくないなっていうのがあって」
■誰にとってのツール、誰にとっての生理に対してもちゃんと肯定してあげられるような曲にしたかった。
「そう。だからそれが、曲って20年前もあるし20年後もあるんだっていうことで。曲もちゃんと生きてるからさ。撮ったけどそのままタンスにしまって忘れられてる写真みたいに普段は忘れられてても、誰かの記憶に残ってて、いつか引っ張り出して聴いた時にどんな機能をするかっていうのは凄く大事なことだと思っていて」
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text by鹿野 淳