Posted on 2013.05.18 by MUSICA編集部

plenty、驚異的な進化と深化を刻んだ大傑作『this』誕生

生命が抱える「微かな希望」は、
この音楽によって強く雄大な光となる――。
ただ苛烈に「音楽」を突き詰め、
ただ切実に「生きること」と向かい合い、
その果てに打ち立てた素晴らしき大傑作『this』。
日本のロック史における紛うことなき名盤、
ここに誕生!

『MUSICA 6月号 Vol.74』P52に掲載

■正直、想像を遥かに超える素晴らしい名盤でした。これは凄まじい作品を作ったね。

「おぉっ、やったー!」

■『plenty』後、3rd EPの“傾いた空”を筆頭にソングライティング力がもの凄く上がっているのはもちろん感じていたんだけど、これは本当にとんでもないレベルに行っちゃったなと思った。メロディや歌詞はもちろん、アレンジやサウンドの表現性も飛躍的にレヴェルアップしていて。本当に素晴らしいです。自分ではどうですか?

「満足してるかって言われたら、ちょっとわかんないけど――」

■え、これを作っておいて、まだ!?

「うん(笑)。でも、凄く納得してるし、いいアルバムができたと思う。作る前に描いていたものを上手く表現できたと思うし、ちゃんとアルバムとして着地できたし……結構バタバタだったけど、でも凄く納得がいってます」

■前作の『plenty』は、膝を抱えたひとりの少年が世界に踏み出していくまでを綴ったある種のドキュメントのような作品だったし、実際に作っていく過程も、生活の中で日々綴っていったものをアルバムにまとめたっていう流れだったと思うんだけど。今回はどうだったんですか?

「今回はそういう生活感とか日常を綴るみたいなことはなかったですね。もっと楽曲として1曲1曲考えていったというか……だから本当に、前のインタヴューの最後に言ってた『気が狂ったようにいい作品を作る』っていう、ただそれだけを考えてましたね」

■つまり、感覚的に曲を作っていくっていう感じじゃなくて、音楽っていうものをよりシビアに見つめながら、明確な意志を持って1曲1曲、探究を進めていった感じだったんだ?

「そうですね。だから自分やバンドにとって必要な曲や作品を作るっていうんではなくて、できた楽曲、自分がいいなと思った楽曲に対して、どれくらい自分が尽くせるかっていうことをひたすらやっていったというか………だから今回、音楽的にはplentyの短い歴史の中では新しいこともいろいろやってるけど、それも、そういうことがやりたくてやったわけじゃなくて、楽曲を突き詰めていったら自然とそういうものが出てきて。なんか、余計な『らしさ』とか、この作品の次にはこういう曲のほうがいいとか、ライヴ映えがどうとか、そういうことを一切考えなくなりましたね。出てきたものをどうするかっていうことだけに時間をかけたっていうか。だから、凄く俯瞰してる作品だと思います。手触りとしてサラッとしたものが作りたかったんですよ」

■全然サラッとはしてないと思うんだけど。

「え、そうですか?」

■うん。むしろもの凄く深いし重厚。郁弥くんが言うサラッとしたものって、どういうことなの?

「これ、いつも言い方に困るんですけど、地味っていうかハイパーじゃないっていうか…………………でも、着地するところとしては演歌であるっていうのを意識してました」

■演歌?

「うん。俺の作る歌って基本的に演歌だと思うんですよ。現代の演歌っていうか、フォークっていうか。で、それを西洋のお皿に乗せるんだっていうことは凄く意識してて。ロックって海外のものだけど、そういう西洋のお皿に日本のもちっとしたご飯を乗せたい、おにぎりを乗せたい!っていう、そういうことばっかり考えてた気がします」

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text by 有泉智子

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